COFFEE & GALLERY SALON " you "
COFFEE ROASTER " in "
自家焙煎珈琲店 国分寺(陽)&青梅(陰)
Since 2006
足下でカサつく落ち葉の横を、ついこないだまで肌もあらわに闊歩していた人々が、
長い布切れに身をくるみ当然な顔をしてホット・コーヒーを欲しながらカサカサ通り過ぎる。
まだ半袖短パンでサンダルを履いて
カロチンの効いた黄色い野菜ジュースをチュウチュウやりながらうろつく私が、
なんだか置いてけぼりを食らったように気違いじみて恥ずかしく思う。
季節も何もかも、私などお構いなしに
過ぎ去っていくものだ。
秋になると申し合わせたみたいに木々は葉を丸刈りにして出家し、
あるいは思い思い頭を赤くしたり黄色にしたりして、不良化する。
秋は紅葉。そんなことは皆知ってる。
でも何故、恋をしてるわけでもないのに誰のために赤くなるのか?
なんてことは、当然のこととして考える余地もなく、誰も気に留めやしない。
ただカサカサ過ぎてゆくだけなのだ。
考え無しに明確な「答え」だけは用意されている「常識」は沢山あるのかもしれない。
世の中が「答え」だけを求め、そこにいたる「お知らせ」だけを
欲しているから、きっと「なぜ?」という過程を探ろうともしないからだろう。
そんな時間が大人にはもったい無いのかもしれない。
そしてすべては、画一化されゆるやかにして確実に過ぎ去ってゆく。
ピストルと同じ時速1400kmで回る球の上にいる私たちは、
バンッと撃たれてる間に感傷的になる暇など無いのかもしれない。
それでも秋は、
なんだか人の心も足もとめ、
時速200kmで廻る血を、アントシアニンのように赤く高揚させる
何ものかをはらんでいるように思う。
少し立ち止まって野川のたもとのその店で、
ホット・コーヒーでも待ちながら、
人々はその珈琲店の窓から覗く何ものかの樹が、
早く紅葉しないか、時を過ごすのだろう。
野菜ジュースの黄色を身体にたくわえた私は、
「ねじまき雲」でユキワのポットを湯で満たし
コーノのドリッパーにムクムクとハンバーグの山を作る。
桜の樹のある橋のたもとの鴨は、
鳴き声知れず、ただプカプカ鯉とたわむれている。
さて、
「ねじまき雲」は毎度お知らせ無しに、あるいは事後報告的に
突然通り過ぎてゆくお店です。
やれやれまたか、という感じでお馴染みですが
「ほうじ茶ラテ」にはもうリンゴのサーフボードもレモンのサーファーも
浮かんでおりません。
秋が、浮かんでおります。
「なっつラテ」に、春から浮かんでいた桜の花びらも描かれてはおりません。
秋が、描かれております。
夏に起つ「霜柱」は、エスプレッソ担当「くるぶし」の
「寒い。」
の一言で一昨日終了いたしました。
当然夏限定「レモンゼリー」はとっくに終了いたしております。
また来年。。。と言いたいところですが、来年当店が存続している保証は
なにもありません。
いつ過ぎ去るか分からないもの、カフェ以外にも沢山あります。
会いたいたいときに、飲みたいときに、そこへ。
足の軽い秋のうちに、その時しかないその時を、通り過ごしてしまわないように
過ごしましょう。
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