COFFEE & GALLERY SALON " you "
COFFEE ROASTER " in "
自家焙煎珈琲店 国分寺(陽)&青梅(陰)
Since 2006
前回のブログでたどり着いたのは
ここ、釈迦堂遺跡博物館http://www.eps4.comlink.ne.jp/~shakado/index.html
である。
この旅に珈琲は関係ない。
相方のライフワーク、
古代人から、生きるという純粋さとヒントを学ぶ旅である。
中央自動車道釈迦堂パーキングエリアに車で乗り付ければ目の前が博物館なので
便利なのだが、前述の通り車の運転が出来ない私たちは
勝沼ぶどう郷駅から自転車で
急な高低差とまだ若葉初々しいぶどう畑を楽しみながらの
サイクリングとなった。
暑いうえに、途中相方のブレーキ調整のため立ち止まった急坂に
グローブを置き忘れた。
私だけ坂を登り戻り
一人ぜぇぜぇウェッティーな状況に陥るハプニングがあった。
駅から直進し細い急坂を下ったのだが、
何のことはない、駅を出て左の緩い下り坂を
降りるのが巻きルート。
いきなりルート選択を誤った上の凡ミスであった。
効かぬカンチブレーキで手がプルプルになってしまった。
ヒルクライム好きでなければ左に行くメインストリートをオススメする。
この博物館、いままで訪れたどの遺跡博物館より洒落がきいている。
こんな細かい表示の弄り、いったいどれほどの者が気づくだろう?
彼女は何をしているかというと、無心にスタンプを圧している。
ひたすらに押して押しまくっている。
それほどに、こんなに押す人いるんですか?ってくらい
スタンプが充実しているのだ。
彼女はスタンプがあると昂り頬を赤らめご機嫌になる。
20分近くは没頭していたろう。
こういうサブコーナーの充実は来場者をいかに楽しませようかという
気配りとやる気の顕れ。
こういう活きている公共施設に巡り合うと嬉しくなる。
この博物館には一人ほど気の合いそうな学芸員さんがいそうだ。
展示物はとにかく顔。
顔、顔、カオカオ様である。
関東とりわけ山梨から長野にかけては多く顔面把手付土器が
出土している。
それも縄文後期以降にはパタリと見られなくなるようだ。
いろいろ諸説あるが、これだけの顔を前にすると
ぼんやり当時の情景が見えてくる。
たぶん最初は意味など無かったのだろう。
誰かが面白がって顔を付けてみたら、面白い。
斬新だからその隣の家の者が真似をした。
またその隣も隣の家も。訪れた旅人も大人も子供も。
ブームになって広まった。
競ったような感じはないので
てんで自由にやったのだろう。
その内、意味を持たせる者も現れたかもしれない。
人型というのは一番身近であるので、
それだけで意味を持ちやすいし
興味を惹きやすい。
人付き合いは苦手だが、私も人自体には興味があるようだ。
時々絵を描いたり人形を作るが、
無意識下で創造するものは人型になることが多い。
自分自身が人間である以上、そうなるのだろう。
古代は今より情報伝達のスピードは著しく遅いから
現在の一分が一年に値したかもしれない。
じわりと広がったブームはやがて終焉を迎える。
取り立てて学問的理由などないかもしれない。
純粋に、飽きたのだ。
人間は、
面白がって、あるいはカッコよさに惹かれ、
興味を持ち、
真似し独創し、
意味を持たせ、持続し
飽きる生き物だ。
博物館では古代人の食性を知る資料もある。
先日トチ餅を食べる機会があったが、とても渋が強く
湿り気のある古民家の階段を思わせる味と香りがした。
ドングリも一部を除けば強い灰汁があるので
長い時間根気よく煮溢し灰汁を抜かねばならない。
よくこのようなものを常食したものだと感心するが、
獣に襲われるリスクも少なく手間なく同じ場所で毎年収穫出来
貯蔵に向くこれらは、
ある程度時間さえかければ腹が膨れ栄養満点。
一定時期の忙しさを除けば遊んで暮らせるので
彼らにとっては無駄なく効率的な食物だったのだろう。
釈迦堂で特徴的な出土土器は、この水煙式文様である。
火炎式は有名で誰もが縄文土器に描くイメージだが、
水煙だけは、この地方でしか見つかっていないようだ。
火炎がうねり立ち昇る心情の爆発だとしたら、
水煙は繰り返し渦巻く荘厳な思案の膨張だ。
変態的に繰り返す線と穴。膨張しながらも保つバランス。
火炎式を見るとグワリと魂が高揚するが、
水煙は私の内にもっと深い昂揚をもたらした。
釈迦堂遺跡はパッションだ。
土器の顔は語りかける。もっと笑えと。
水煙は問いかける。しつこく繰り返せと。
それさえも勝手に私の心象が産むこと。
純粋に生きれば、後世のヤツが勝手に意味を見出すのだ。
時代を超えて伝わるものがある。
結局のところ、
ようは無心に意味もなくパッションでスタンプを押して
大満足できる人は、強い。
ということである。
人とは凄いエネルギーの塊なのだなぁと、
後ろ髪引かれる思いで釈迦堂遺跡博物館を後にした。
釈迦堂遺跡博物館へは、
お手軽な自動車旅より、
登り下りのロマンある
自転車旅がオススメである。
(つづく)
PR
この記事にコメントする