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COFFEE & GALLERY SALON " you " COFFEE ROASTER " in " 自家焙煎珈琲店 国分寺(陽)&青梅(陰) Since 2006
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何かしようと思うと、いつも雨だ。


その日も雨だった。ひどい雷の鳴る嵐の日だった。

どんよりとして、客足も鈍い。いや、もともと客の多い店ではないのだけど。

雨は大学の頃から嫌いだった。
暗いし、だいいち天然パーマが湿気を吸って髪がチリチリになる。女の子には会いたくない。

だからよく雨の日は通学途中に挫折した。
誰も自分を知らない街におりて、一段と暗い映画館に行った。
久しぶりのジブリ映画を独りで見に行ったこともある。

前情報を調べなかったので「耳をすませば」が少女コミック原作とは知らなかった。
女子とカップルに囲まれて、男独りパンフレットを読みふけった。
まだ見ぬ武蔵野の街を舞台に起こる、少女の不思議な出来事に胸トキメかせながら。

話しがそれた。


実は今、雨の日はそれほど嫌いではない。
いつも混むカフェや、お気に入りの雑貨屋が空いているからだ。
雨の音を聴きながら、しっとり珈琲や酒を利くのも良い。

国分寺の店の開店日も嵐だった。

嵐の日には何か起こる。

その日、雨の降りしきる中、重い扉を開け入ってきたワタナベナオコ氏も、
雨が嫌いではないようだ。
何かに行き詰まった雨の日は、ねじまき雲に行けばいいことを知っている。
お店が空いていて、
なおかつマスターが、妄想狂からくる突発的アイデア放出型変人だということを知っている。

彼女は青梅だけで営業している時からのお客さんで、
その頃は作家活動はしていなかった。

国分寺店を再開してから来てくれたその女性は、
なんとも不思議な物を創る作家になっていた。
パイオニアだけに悩みを共有する同業もいないのだ。

彼女はある意味、森の記憶をガラスに定着させる仕事をしている。

その日、彼女はギボウシの葉を特殊な技法で透過させたランプを、
ねじまき雲に寄贈しに来てくれた。

はじめて見る透過葉のランプは、雨で沈む空を、森の時間で優しく照らし始めたように思えた。










そうしてランプを見た瞬間、私の中には別の時間軸が流れ始めていた。


「あぁ、音が聞こえる・・・自分の中にも這う、葉脈の鳴く声が。」


彼女は普段、zum Beispielという名で活動している。

ズム バイ・・・

ツム ビーシュ・・・

何度聞いても覚えられない。

「例えば~」という訳が当てはまるドイツ語だが、
極力何も意味を持たせたくなかったからこの名前にしたそうだ。

そんな葉脈女と変態マスターが、ココ、ねじまき雲で展示をしたいとお互いに思うまで、
そう時間はかからなかった。


私には、総てのものには理由があって存在するように思えてならない。
もともと意味などないのだけれど、存在するうちに生きてきた証が刻みこまれ、
その人、その物、その葉だけの物語が育つのだ。

だからこそ思い入れが生まれ、愛着が育まれ、時には憎しみの脈筋も育つだろう。
この世に同じものは二つとしてない。

ワタナベナオコ氏も、ソロではなく誰かと一緒に活動するならば、
意味を持たないzum Beispielとは別に、意味が欲しいと考えていたようだ。
少しダサイようでステキな名前がいいと言う。
ストーリーが欲しいと言う。
難しい注文だ。

だけど、動き出す、時計の歯車が一致した。


さて、私がランプを見た瞬間、もうひとつ浮かんだ顔があった。

温和な髭面で槇原敬之のように笑うマルポー、笹本邦好さんの顔だ。
古道具屋マルポーに関しては前ブログに書いた。

笹本氏にも不思議な能力がある。
物と物とを引き合わせ、考えもつかない組み合わせで新たな価値観を産み出せる、
見立てアーティストだ。

そのセンスと、この透過葉があれば…。

早速ワタナベナオコ氏にマルポーさんのことを伝えると、なんと2人はすでに知り合いであった。


話しが早い。


こうして、透過葉職人と古道具屋と珈琲屋は、
それぞれ本業とは少し離れた次元に成立する、
架空の工房を立ち上げることとなった。


見える人にしか見えない、
あちらこちらに工具の散乱した道具屋のような工房には、
見えるようになった人にしか見えない葉脈が、
色々な時を歩んだ道具や部品に生えている。
それを見えやすくするように、
特殊な術で切り取ってガラスに挟み、
永遠に光るランプや作品を創る工房。

その工房に居る一羽のキジバトには
蝉の心が宿っていて、
一層深い意識で「透視る(みる)」ことの出来る者には、
その鳩の羽は、
美しく透けるヒグラシのそれに写るのである。
鳩と決めつけるのは人の心。
純粋に視れば、
それは鳥ですらないかもしれない。

ミミをスマセバ、あなたにも聴こえるかもしれない。

ヒグラシの声が。


これが、企画展、架空工房ヒグラシドリのコンセプトであり、全容である。

分かりにくいことこの上なしのストーリーである(笑)。

これからも架空工房ヒグラシドリは
活動の形態を変えながら、コラボ作品をおいおい作ってゆく予定だ。


とりあえず、
企画展ヒグラシドリは今日でおしまい。


ヒグラシドリとして飾っていたランプたちは、
zum Beispielhttp://zbwas.jugem.jp/?cid=2さんで展示後も購入することが出来ます。











では、本日で見えなくなってしまう

ヒグラシドリのネジ。

武蔵野の街で、皆様をお待ち致しております。













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無題
同じ空間、空気に触れた喜びを、今ここに感謝いたします。
西瓜堂 2014/02/05(Wed)18:02:45 編集
西瓜堂さま
いつもありがとうございます。
今回は鬼灯が大人気でした。
これも西瓜堂さんのお陰です。
お母様にも宜しくお伝えください。
ネジ 2014/02/07(Fri)13:21:43 編集
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