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COFFEE & GALLERY SALON " you " COFFEE ROASTER " in " 自家焙煎珈琲店 国分寺(陽)&青梅(陰) Since 2006
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夕暮れどき

竹林の葉を風の指先がつま弾くたび、

ザァと乾いた旋律の波が走る。

樹々に反響した波は厚みを増して、

軒に掛けられた布の隙間へ、涼やかに溶けてゆく。

風の音でふくよかさを増したタッサーシルクは、

サラサラと言いながらガンジスの流れのように

ただゆったりと黄金色に揺れている。


「あぁ、きっと桃源郷というのはこういう所のことを言うのだな。」


たしかに流れているのに、そこだけ止まっているような時間の中でそう思った。



はじめてここに連れて来てもらったのは、もう5年前になる。


お世話になっている「トコロカフェ」http://tocoro-cafe.com/の上村ご夫妻が

「とっても癒される僕らの特別な場所なんだ。ネジくんを是非連れてきたくてね。」

と、貴重なお休みを私のために潰してくれたのだ。


竹林に囲まれたそこは、そのまま「竹林カフェ」という。


良く練られた小麦の、ふっくらと焼ける新鮮な香りがする。

それとともに

土むせぶ大地の芳香と相まったマサラが、

鼻腔と胃を優しくくすぐる。

インド料理と言えば、茶色いカレーと黄色いタンドリーチキン。辛い。

位しか知らなかった私にとっては、まさに刺激的な体験だった。

名前は忘れてしまったが、赤、緑、白、茶色などのスパイスのディップが

ミルクピッチャーの白磁によく映えていた。

艶やかな月桃の葉に、コンガリ焼き目のついたもちもちとした生地と

豆のカレーの入った銀器がのっている。

それをパリモチッと小さく千切って、カレーやディップにつけて口に運ぶ。


ヨーグルトのようなすっぱ味のほどよい白。ココナツの香りもほんのりとしたように思う。

光沢の茶色は、デザート感覚でチャツネのような甘みがあった。

フレッシュな赤は、トマト。香り豊かで爽やかな酸味だ。

クロード・モネの描くような一番絵画的な緑は、なんだったろう?


カレーはスパイシーなのに不思議なくらい、するする胃に入っていく。

ほくっとしたお芋のようなお豆たちが、辛さを優しくしてくれるのだろうか。


そして最後に出てくるマサラチャイは、

「ねじまき雲」と同じ上泉秀人氏作のシノギの蕎麦猪口に入ってくる。


ほんのり甘く、身体に沁み入ってくる優しさがある。

それに付け合わされた、見慣れない小さな四角いお菓子。

一見して食べ物には見えないくらい、きっちり四角い白っぽい物体は

最初なんだか分からなかった。


それは私の食体験に衝撃をもたらした。

「なんだ!これは!!?」

バルフィーというものらしい。


ほろっとかじると、ぎゅっと凝縮したスパイスがミルクの口溶けで

ねっとり口中に広がってゆく。

そこには総ての味覚と嗅覚と食感を魅了する魔法があった。


脳裏にこびりついたその味は、告白すると

「ねじまき雲(陽)」で出しているチャイプリンの素となっている。

しかし、到底その再現などは出来てはいない、まったく別の代物なのだ。



こんなにも繊細に、多種多様な形と

鮮やかな色彩でもって楽しませてくれる芸術家に、

思わず手を合わせ拝みたくなるほどだった。


その創作主は「ラケッシュ」と皆から呼ばれている。


冗談も言えるほど日本語の達者なインドの青年だった。

藍色のぴたりとしたジーンズがよく似合うイケメンインド人だ。

20歳もそこそこに、インドの田舎からこの東京の田舎へ、

糸と、物語とを紡ぐためにやって来たのだそうだ。


竹林カフェの傍には、悠に築100年は越えるであろう黒光りした民家が腰を据えている。

うすぼんやりと橙色の光の灯された内部には

ガラス越しに大きな織り機や、反物が見える。

そこは「真木テキスタイルスタジオ」http://www.itoito.jp/

もともとは竹林カフェより先にこの存在があり、併設するかたちで

竹林カフェは建っている。


真木テキスタイルスタジオは、主宰、真木千秋氏が運営する

手織りものの工房だ。

紡ぎ、撚り、染め、織りまでを一環して行なっている。

その工房がこの母屋なのだ。

真木氏はいつも芯からの笑顔で皆と接し、

くだらない立場や枠は越えて人や物と対話しているように見える。

きっと肩書きなどに縛られる事無く、ひとりの人間として興味あることで

純粋に生きている素敵な女性なのだろう。

だからこのスタジオや竹林カフェは、
母なる家、真木氏そのものの一部として

呼吸しているようにさえ思えるところがある。



あれから5年。



母屋は、いまも威風堂々と腰をおろしている。

ひんやりとした囲炉裏端の板の間を歩くと、時の止まったような重厚な空間には

母屋に刻まれた幾千の人の記憶が、瞬間賑やかな声になって溢れ出す。


竹林カフェは真木テキスタイルスタジオの季節展示のときのみ

オープンする場となった。

インドに「ganga」という新しい工房が作られ、

ラケッシュさんが、そこの工房長に就任したためだ。

常時あの美しいインド料理が食べられなくなったのは残念だが、

展示毎、色彩豊かに新しい風をはらんだ布とともに

来日するラケッシュさんのお料理が、また食べられるようになった。



先日私は

黒光りする床の色に負けぬほど

艶やかに煎りこんだインドモンスーンを

母屋で点てた。



竹林の秋。


「真木テキスタイルスタジオ」で、

ふくふくとしたgangaの、温かみのある風合いの作品がお目見えする。

それとともにラケッシュさんが

インドのタンドールでチャパティを焼き、野菜や豆のカレーを作ってくれる。

いまも藍色のジーンズが良く似合う。相変わらずのイケメンぶりは健在だ。

スティーヴン・セガールのような高音域の日本語にも

一層優しさと磨きとがかかっている。

今度はどんな風に私たちの舌と目を楽しませてくれるのだろう。


しかし、今回はラケッシュさんの沸かすチャイはない。


代わりに、ねじまき雲が母屋でインドの珈琲を点てる。

一昨日はその試作にこの桃源郷を訪れたのだ。


作る予定は無かったようだが、バルフィーだけは作ってくれるよう懇願し、

珈琲とともに食せることになった。


さて、このスロードリップ変人が

果たしてこの母屋に残すのは、

傷跡ではなく

美味しい足跡であるように

務めよう。


責任重大。楽しさ絶大。






「竹林の秋」


2013・10・25(金)〜10・29(火)


会期中無休 11:00〜18:00



ランチタイム「竹林カフェ」 12:00〜15:00 *無くなり次第終了


ねじまき雲「母屋囲炉裏端」 12:00〜18:00 LO 17:00

期間中はねじまき雲(陽)はお休みとなります。

23日(陰)は仕込みのため臨時休業いたします。
30日(陰)は夜の部のみ営業となります。


吉祥寺OUTBOUND 母屋にオープン

この他、OUTBOUND代表小林和人氏による講演

熊谷幸治氏による土器製作・野焼き

真木テキスタイルスタジオ 田中ぱるば氏による映像トーク

などが予定されております。


詳しくは「真木テキスタイルスタジオ」HPにてhttp://www.itoito.jp/




近々また内容詳細についてブログでお知らせいたします。

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ネジ
年齢:
40
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性別:
男性
誕生日:
1977/03/05
職業:
自家焙煎珈琲店
趣味:
写真・自転車
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