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COFFEE & GALLERY SALON " you " COFFEE ROASTER " in " 自家焙煎珈琲店 国分寺(陽)&青梅(陰) Since 2006
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当店は、展示毎にメニューを変えている。


漂雲詩片では、画像の新ドリッパーを用いている。


造形の美しい金属部分は、
知人のハニービーンズさんhttp://www.honeybeans-sugamo.com/考案で、
「試してほしい。」と託されたものだ。
コーノのペーパー用に町工場に頼み込み、開発したものだそうだ。

託されたのが丁度、水墨画展の時期と重なり、
「さて、今回の展示はどうやるか?」と頭を捻っていたところ
このドリッパーが傍らにあった。

「これだ!」とピンときた。

ドリッパーとポットは筆、珈琲は墨、器は画面に見立てられなくもない。
それなら、筆を作るにこの金物はうってつけだ。

はじめてこのドリッパーを見た瞬間から、私の脳裏にはネルが浮かんでいた。
ペーパー用ながら、それが良い体裁の型をしていると思えた。
しかしそれにしては、持ち手となる柄が短い。

筆なら持ち手は長いほうがいい。

それに毛先をネルとするなら、起毛している点、
珈琲エキスを自在に含むという点で筆先と共通している。

水墨画は一本の墨の濃淡で、世界を顕し、色彩をも表現する。

珈琲も一つのブレンドで、漆黒から淡白までを、
「苦み」という共通項に潜む「何か」を
それぞれの段階で表現する合致を、水墨に見い出すことはできないだろうか?


ネルはペーパーを型紙にし、相方に縫ってもらった。
柄を探し、金物店や古道具屋を巡り、流木も試したが
どうもしっくりこない。

家にあった細枝は削るとすぐにポキリと折れた。

今回の展示のDMには桜の水墨画が描かれている。

当店よりほど近い橋の脇にも桜の木が生えている。
去年、その枝が橋にかかり邪魔だからと数本が切り落とされていた。
それを思い出した。

橋の下まで行くと、思ったとおり手頃な枝が、皮をすっかり風化させ落ちていた。
切られた断面が乾燥で自然と割けて、「オレを使え。」と言っているようだった。

雄々しい鹿の角のような枝を持ち帰り、洗い乾かし、湾曲した根元を切り落とし
割けた断面にドリッパーを差し込んだ。
面白いように金属柄は吸い込まれ、留め具があるかの如く、カチリと止まった。
そこをビスで固定し切り落とした先端側には麻ひもで掛けひもを作った。


水墨の桜を見ながら、桜の枝で珈琲を点てる。


止まっていた桜の時が今、漂雲詩片で流れはじめた。そんな気がした。


「そうか・・・!」と思った。

器は画面じゃなかった。

器は硯だった。

ポットは筆ではなく、濃淡を操る水滴。

その桜の記憶を飲んだお客様の心にこそ、絵は描かれる。

画面は常に、人の心。

ふふふ。

だから皆、笑顔の頬が桜色に染まっていくんだ。

いまだ芽吹かぬ外の桜。

漂雲詩片を内に抱きし、ねじまき雲の液体は、



桜が満開だ。




「漂雲詩片」

明日まで。






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