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COFFEE & GALLERY SALON " you " COFFEE ROASTER " in " 自家焙煎珈琲店 国分寺(陽)&青梅(陰) Since 2006
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「あっはっは。津波なんかあったらここなんてイチコロよぉ〜!」

きらきらと笑い飛ばして彼女は言った。

結構シャレにならないことも、さらっと笑い飛ばしてしまえるのは
万が一そうなっても、悔いのないほど大好きな場所を見つけられたからなのかも
しれないな、と私は思った。

太陽に白く反射するリネン地のシャツに、
ピタッと青いジーンズをロールアップして、
ジャックラッセルテリアという真っ白な猟犬を連れ、
しゃんと背筋を伸ばして歩く彼女は、

どこにいても肝の坐った生き方をしている。




オシャレなレンガ色のスターバックスがデンとあって、
潮の香りのするうねうねとした葉山のバス通りから一本山側に入ると、
もうそこは東京の下町のようにひっそり密集した家々が立ち並ぶ
どこか懐かしい路地になっている。

ふと電柱を見ると、白と青の爽やかな四角いプレートに

「津波注意 ここの地盤は 海抜5.8m」

と、緊張感のないロジカルな文字が
間の抜けたTシャツのロゴのように並んでいる。

その電柱を角に曲がり、
更に吸い込まれそうに狭い路地を50歩(たしかにそれは50歩なのだそうだ。を)奥にゆくと
瞳孔が開きそうにポッカリとすべてが黒い
強固にこじんまりとした日本家屋が見えて来る。

そこが「食」を中心に据えた環を作り出す彼女、大西麻子氏の新しい城。
「昵懇」http://jiccon.com/about.htmlだ。

黒いお店の前に立つ大西さんは、まるでくっきりとした白い穴のように見えた。
白い意志の塊は黒い城のお腹の中で、魔法使いみたいに
ほっぺたの落ちそうな料理をむくむくと産み出してゆくのだろう。



4月22日の火曜日に、そこで私は珈琲を淹れさせてもらう。



某日、
新宿で湘南新宿ラインの乗り換えに目の前で失敗した私は
東京駅から総武線快速・横須賀線に乗って
それでも打ち合わせ予定時刻よりだいぶ早く逗子に到着することができた。

昔に一度逗子に来た時に、葉山までの道すがらに海岸があるのを
記憶していたからだ。



ビーチコーミングを、しようと思ったのです。




「昵懇」からも徒歩5分ほどで、砂浜に出る。

逗子からそこまでの道すがら、温かい風と照り返しで少し汗ばむ海岸線で
小2時間ほど拾い物をした。

写真が戦利品の数々。

あまり大物はないけど、波に洗われた物体の、成れの果て的得体の知れない無用なものを
沢山拾った。


いろいろ考えながら拾うと、そういうゴミみたいなものも宝物に等しく思えるから不思議だ。

たぶん、私や私の店なんかもそういうものの寄せ集めで出来ているのかもしれないな、と思う。
どうしようもないものを拾いながら、ひとつづつストーリーをこめて、色をつけて、慈しむ。
いつの間にか、なくてはならない大切でかけがえのない唯一無二のものになっている。

そういうものなのかもしれない。

案外レアな大物は落ちていなかった。

そいうえば、"あの人"もたしかこの辺に住んでいて
ビーチコーミングをするって言ってたっけ。
と、取材でお世話になった人の笑顔がふっと浮かんで、
いいものは全部そいつに拾われてしまった後かもしれないな、
チキショウ!と勝手にその人のせいにしたりする。

たしか手紙の入った瓶を拾ったと聞いた気がする。
そんないいものはそうそう落っこちていない。

いわゆる"持ってる"タイプの人はどういうわけか、そういうものを運命的に
たぐり寄せる力があるようだ。
大西さんが黒い城を手に入れたのも"持ってる"人だからだと私は思っている。

"持ってる"彼は、今頃どうしているだろうか?
掴もうとする夢に向かって進んでいるのだろうか?
まだツキは"持ってる"だろうか。

などと考えながら、パステルブルーのガラス瓶のカケラを拾う。


すると、去年フランスに旅立っていった大学生のお客さんの顔が
突然ふっと浮かんだ。
初めて来てくれた時はまだ高校生だったっけ?

自分の学科とぜんぜん関係ない教授にくっついてフランスにちょこっと行くというので

「フランスにも不味いチョコってあるのかな?お土産に不味いチョコ、買ってきてよ。」
と冗談で頼むと

本当に買ってきてくれた。しかも美味しいやつ。
ニワトリと、色とりどりの卵がいくつかと、藁の地面が全部チョコレートでできているやつ。
壊れてしまうといけないと、機内持ち込みで大事に抱えながら
日本に帰って来たという。

彼はその後大学を一時休学し、フランスに長期滞在することに決め、また旅立っていった。
今は店の冷蔵庫に、チョコの藁だけが入っている。
フランス語を「星の王子様」を訳しながら覚えていた
王子様みたいな甘い横顔が脳裏に浮かぶ。

海の向こうで、自分の星は見つけられたかい?

と思っていると、


ニワトリの骨みたいなものを、拾いました。




・・・とまぁ、私の"持ってる"度は所詮こんなものだと解ったのだが、

それでも、これからも拾い続けていこうと思う。


物語を抱きながら、


波にもまれて、まるくなって、きらきらとひかるカケラにまた

会えるように。



とりあえず「海抜5.8m」


どんな波が来ても、黒光りする船で乗り越えて宝探しをする

海賊のような珈琲を淹れようと閃いた

一日。




4・22 もし晴れて津波が来そうになかったら

皆様も是非、浜辺で自分探しのビーチコーミングを

楽しんでください。

その宝物を、チキショウ!と言うであろう私に見せびらかしに「昵懇」へ。





詳細はまた後日。






















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1977/03/05
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自家焙煎珈琲店
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