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COFFEE & GALLERY SALON " you " COFFEE ROASTER " in " 自家焙煎珈琲店 国分寺(陽)&青梅(陰) Since 2006
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「あぁ、、、今日もヒマだな」

見飽きたくらいの店内に反射する窓の光を目で追う。
何かが少し閃いたような気がして
ノートを開き万年筆を手に取る。

珈琲店。それは「待ち」の仕事。

繁盛店や宣伝を上手く駆使するお店なら
目まぐるしく日々は過ぎるのかもしれない。

でも、ある種のコンセプトを持ち、あるいは古臭い信念だったり
不器用だったりする店主のいるお店は、大概ヒマだ。

その時間にも頭や手は動いていたりするのだから
ただヒマと言っては語弊がある。

そして、気づく人は少ないがそういう隙間というものをお客さんに提供している。

そう、「ヒマ」を作っているのだ。

ノートを閉じて手帳の予定蘭に、ヒマダと書いてマルで囲う。


 
微かに潮風香る見慣れた街の、見慣れないドアの前に私は立っていた。
この数ブロック離れた同じ町内に、
昔からお世話になっている姐御肌、大西麻子氏主宰、料理のお店
「昵懇」http://jiccon.com/index.htmlがある。

海開きにはまだ遠く、海の似合わない男No1の自信がある私が
海のあるこの街に行く理由は、ビーチコーミングと出張珈琲くらいなものだ。
でも今回の目的は、ここ。

「ツバメに注意!」という黒板が目をひく。
鳥を愛する人に悪い人はいない。というのが私の持論。

葉山の曲がりくねったバス通りは狭くてもメインストリート。
いつも高級車やサーファーやローディーたちで賑やかだ。

オープンカーに乗ったカップルの男がピンクのセーターを肩に背負って
女はドでかいサングラスをかけて髪をなびかせるという
嘘みないにバブリーな光景に出くわした時は失礼ながら笑ってしまった。

そのメインストリートにしっかり面しているのに
まるで気配を消しているかのようにソレは確固たる沈黙をもって
佇んでいた。
見える人にははっきりと主張して浮き建って見える建物を見つけた時
胸が少し熱くなった。





「HIMADA COFFEE」

と窓に書いてある。

そう、ヒマな店をやっているのに結構ヒマな時間はない私がやって来たのは
こちらのヒマダさんの珈琲を飲むため。

ある日、慎重すぎるくらい丁寧な言葉遣いで年齢不詳の低く味わい深い声の男性が
電話をかけてきたのだ。

「あのぉ~、お忙しいところ申し訳ございません。
じつは珈琲のことでご相談がありまして・・・」

それがヒマダコーヒー、Sさんだった。

ヒマダさんとウチは定休日が丸被り。
なのに有難いことに、三顧の礼よろしく当店に足を運んでくださった。
彼がウチの珈琲豆を気に入って下さったのが幸いし
メキシコ・マヤビニックの深煎りを卸させていただくことになったのだ。

そして不義理な私はなかなか足が運べず仕舞いで
随分経った2018年4月某日、ようやく彼のお店を訪ねることが叶ったのである。
遅れてごめんなさい。

彼のお店のスタンスは当店のそれとよく似ている。
いくつかのルールがある。
しかしそのお願いごとは穏やかな時間のための決まり事だ。

ストリートに面した窓は開いているにも関わらず
不思議と外界と隔てらたように喧噪は侵入してこない。

そして訪れる1人客のほとんどは
静かに目の前の皿やカップに集中しつつ思い思いの時間を味わい
時おり常連客と交わされるSさんとの会話の端々に笑い声が漏れる。
決して沈黙のみを要求する店ではないのだ。

Sさんは芯はあれども物腰柔らかく、
どこか昭和初期の書生さんといった雰囲気の若者だ。

店内はアンティークなものたちが
Sさんの美意識で散りばめられ、そこにあるべき距離感を保って息づいている。

頼んだアイス珈琲はしっかりと濃厚でまろやかで
甘みの引き出された苦味。

ホットも、まろやかで優しく丁寧にネルドリップされた様子がわかる。
私なんぞの淹れる珈琲よりよっぽど美味しいのではと焦ってしまった。
それこそ焙煎士冥利に尽きるというもの。
このように扱っていただけるなんて有難いことです。




珈琲のお供に注文したチーズケーキ。
こちらも一筋縄ではいかぬ独特の美味しさ。
胡椒がきいていて、凝縮したチーズ感と甘すぎない味わいは
珈琲はもちろんラム酒やワインとも合いそうだ。


ヒマダさんでは軽食もご用意があるので店名にはコーヒーとついてはいるが
日本で言うところのカフェ寄りなのかもしれない。
しかしお店に漂う気配や気概は珈琲店と言っても差し支えないだろう。

そしてSさんは可能な限りソースやパスタも仕込み時間を惜しまず
手作りなさっている。

喫茶店には定番のナポリタンもある。
ソースが絡むよう成形された
歯ごたえのある自家製手打ち太麺には自家製ケチャップ。
ケチャップというより奥深いトマトソースに近い。
薫香ふくよかなベーコンも、これまた自家製。。。
ナポリタンとひとくくりにするのが申し訳なくなるような
上品かつオンリーワンな、ここに来たなら是非とも試していただきたい一皿だ。

カレーもカレーで言いたいことは山ほどあるのだが
長くなるのでこれくらいにしておこう。

食べるのに夢中で写真を撮るのもそこそこだったので
画像少な目で申し訳ない。
*きちんとヒマダさんに了解を得て撮らせていただきました。


いい時間を過ごせた。
ご馳走様でした。

ここにはこの先ずっと大切にしたい聖域のようなヒマがある。

ヒマを見つけて、ヒマを作って、ヒマダコーヒーで
その隙間を満喫する。

いつも時間が無くて忙しいことを自慢しているうちは
カッコイイ大人とは言えない。
忙しいは心を亡くすと書くからね。

ヒマを有効に過ごせる大人は、リフレッシュ上手。
心にも身体にも余裕ができる。
そうありたいものだ。

心を亡くしそうになったら、底抜けに心の籠った珈琲や一皿を堪能し
ぼんやりしたり、日々を見つめ直したり
姿勢を正したりするために、海のある街へ
ヒマを探しに出かけてみてはいかがでしょう?


*行きたい方へのお願い。
ヒマダコーヒーさんは当店のルールを守れるような
紳士淑女の皆さまにおススメです。
くれぐれもお店に流れる良い空気を壊さないようにご注意くださいね。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「HIMADA COFFEE」https://himadacoffee.blogspot.com/

三浦郡葉山町堀内975

TEL:046-874-7211

営業時間:11時~18時

定休日:水・木曜日

情報が古くなっている場合がございますので
公式情報をご確認のうえお訪ねください。

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お店に行きたいのですが
明日から東京に遊びに行きます。
青梅店に行きたいのですが、お席とお店が開いて(空いて)いる日はありますか?
9日までいます。
チャリーモくん URL 2018/10/05(Fri)12:01:14 編集
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