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COFFEE & GALLERY SALON " you " COFFEE ROASTER " in " 自家焙煎珈琲店 国分寺(陽)&青梅(陰) Since 2006
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山の稜線に重なった雲のパテを、サンドイッチするような夕焼け。
沈む瞬間はいっすん燃え上がり、ビニールハウスのカマボコ姿が
神聖な礼拝堂のように輝いていた。

目的を果たした後は、勝沼の宿に落ち着いた。
部屋から望む夕陽が日常をリセットしてくれる。

じつはこの旅をプロデュースくださった方がいる。

青梅のねじまき雲の坂下にある清宝院では
毎月第四日曜日の10時~15時
「O' terra  market(おてらまあけっと)」
https://ja-jp.facebook.com/oteramarket
という市が開かれている。
当店の顔なじみも多く出店する気持ちの良い市だ。

この市を立ち上げ、精力的にイベント活動を催し
ところによっては当店の珈琲を美味しく淹れてくださっている
「イルテンポボーラ」のボーラおばさんと
勝沼でカフェと、まち案内をされている「つぐら舎」さんご店主のお二人が
山梨旅プロデューサーだ。
「近場で充実した縄文文化の博物館と安くてくつろげる宿」という
旅のお題をあげると
何でも知ってるボーラおばさんは

「あるわよ。あたし、知ってる」と

「つぐら舎」さんhttp://ameblo.jp/yamanekineko/をお連れくださった。
つぐら舎店主さんも精力的にイベント活動を営んでおり
彼女の主宰する「つぐら市」という市にはボーラおばさんも
参加している。

釈迦堂遺跡博物館と今回泊まる宿

「川口園」さんhttp://kawaguchien.jimdo.com/

をご紹介くださったのは彼女たちである。

川口園さんはその名の通り、ぶどう園を経営しており
ぶどう畑に囲まれた宿だ。
時期によってはぶどう狩りも楽しめる。
ボーラおばさんは川口園さんに
希少ぶどう品種の畑の手入れを教わっている。
なんと氏の畑は釈迦堂遺跡博物館のすぐ近くだそうだ。


とにかく、川口園さんはイイ。

しつらえは比較的新しく、全5部屋というこじんまりとした感じが
ペンションか少し大きな個人宅のようで、
肩肘のはらない居心地にさせてくれる。
そしてこの自分の部屋の如く普通に寛げる空間。
要所の掃除、ベッドメイキングなどが隅々行き届き
なんともすがすがしい小気味良さなのだ。
これはとても重要なポイントだ。
この辺が行き届いていると、旅の疲れは一気に癒えるのだ。
日常からかけ離れすぎず、
かと言ってこちらの手間のない非日常の
清潔感を味あわせてくれる。

接客も過剰さがまったくなく、
そこが逆に家族水入らずで楽しませてくれる
心遣いを感じる。
なんでもいたせりつくせりにすれば良いというわけではない。
こちらが気づまりしてしまっては容易に寛げぬものだ。
まぁ、いたせりつくせりが好きな人もいるのかもしれないが、
我々には何から何までジャストミートであった。





夕食は旬の野菜と貝とエビの彩り豊かなサラダにはじまり




時節であるこごみと、香草を添えた牛蒡のワイン煮の前菜


 
川魚の塩焼きに枯露柿のチーズ巻き、
天婦羅は、4月中旬からゴールデンウィークにかけての時期しか出せないという
ぶどうの若葉。
柔らかい食感と爽やかな風味が、
サワリとした衣に封入されている。
ぶどうの産地ならではの贅沢。




魚が出たというのに、肉もある。
食事は1階の食堂で食べるのだが
各テーブルには最新の火力自動調整鉄板が据え付けられており
油要らずの焦げ知らず。
鍋奉行要らずの便利な時代になったものだ。

これが二人では食べきれないと思えるほど
大量の野菜と厚切りの地産豚肉であったのだが、
自分で釜からよそえるおかわり自由の炊き立てご飯を三杯も頂戴すると
ペロリと平らげられるほど肉質の柔らかく、
程よい油で臭みのない豚であった。
これをいい塩梅の自家製タレで食す。

ここに挙げた画像以外にも枚挙しきれぬほどの
趣向をこたした品数なのだ。

もちろん、
フルーティーなれど甘すぎず、
適度に厚みのある極上の自家製ワインをはじめとする
貴重な自家製酒がお得なお値段で豊富にあるので
追加の酒もサラサラと進んでしまい
危険な夕食である。

朝は朝で




凄い。
の一言に尽きる。
当然吸い物とおかわり自由の炊き立てご飯もセットである。

これだけの内容でお一人様8000円を切る驚きプライスなのだから、
泊まるのならば絶対に晩と朝の二食つけることを強くオススメしたい。

むしろこちらだけのために勝沼へ行くのでも
滋養になって身体も休まるのだから
明日の英気を養うにはうってつけのお宿なのだ。




昨日飲み過ぎたので、自家製のぶどうジュースを一杯。





早めに宿を出た我々は、ブラブラとポタリングしながら
ワインの資料館や図書館を巡り
頃合いで炎天下の勝沼ぶどう郷駅へと向かった。

途中広がるぶどう畑の斜面では、そこかしこにあるスプリンクラーが
プシュプシュあらぬところに水をかけかけ仕事をしているので、
愉快で少し暑さも和らぐようだった。

駅の脇にある公園には昔懐かしい中央線の旧車両が鎮座している。
鉄道マニアなら喜ぶ景色なのだろう。
風雨激しい山梨の急勾配を
来る日も来る日もワインや人足を乗せて耐え忍んだかもしれない
車輪部分の堂々たるは
素人目にも質実剛健、馬車馬のような筋肉美を感じる。

行きと同様に駅舎近くで自転車を輪行袋にいそいそと仕舞いこみ、
重い車体を肩に食い込ませながらホームへと上がる。

するとどうだろう。
何となく後方に殺気を感じるのだ。
振り向くと我々以外には誰もいない。
おや?おかしいな・・・と思い数歩進んだが、
どうも気のせいではない違和感がある。
またゆっくり振り向くとホームの柱に隠れ隠れ
こちらを伺っている人影があるではないか。

「あ?あれっ・・・え?もしかしてつぐら舎さん、ですか??」

「ふっふっふ。そーです。こんにちは。どうでしたか山梨は?」
近づいてくる人影は、やはりつぐら舎ご店主である。

「えっ!?てかどうしてここに・・・だって」
店主さんは前日ボーラおばさんと地方に打合せに行っていたはずである。
それに我々が今こうして駅にいることなどどうして知る由があろう。

「あはは。いやいや、そこかしこに私の情報網があるのでね。ふふふ
この街でお二人のことはすぐ私に伝わるようになってるんです。ほいっ!これ」
とほくそ笑み、やや芝居がかりながら
おもむろにぐいと伸ばした手には袋を持っている。

「え?ど、どうも・・・なんですか、コレ?」

 「馬肉コロッケ。美味しいよ。食べてね。じゃっ!」
言い残すと彼女は手を振り、さっそうと階段をくだって行った。

「有難う、ございます・・・」

まるでキツネにつままれたように呆けている私の手には
ズシリとした手提げ袋だけがしっかり握られていたのだった。
どうやって、改札抜けてきたんだろう・・・。




恐るべし、勝沼。

輪行袋に埋もれながら拳骨ほどもある馬肉コロッケを
ほおばる相方。彼女にとって人生初の馬である。

まだほの温かく、ジューシーなのに淡泊なコロッケは
スタミナ切れの我々の骨身にじんわり沁み渡った。
どこの馬の骨にも優しいコロッケである。

それこそ、どこの馬コロッケか聞くの忘れたなぁ・・・。

まさか旅の終わりにこんな嬉しいサプライズが用意されているとは。

考えてみると、つぐら舎さんは川口園さんと同じ敷地内で
ぶどう畑のトンネルで繋がっている。
趣のあるつぐら舎さんの建物自体が移転前の旧川口園なのだ。

ボーラおばさんをはじめとして、すべては
ぶどう蔦のトンネルのように絡み合う
ひとつながりの道だったのだ。

我々は素敵な魔女たちの手のひらのアーチで
最初から最後までコロコロ転がるコロッケだったのかもしれない。
有難く美味しい旅だった。

日暮れ前には国分寺に着き、
見知らぬおじさんに見守られながら自転車を組み立てた。

来年も川口園に泊まろう。
そのために一年頑張ろう。
いや、あまり頑張り過ぎないようにしよう。
楽しくないことはしない。
持続できて飽きのこない程度、笑いながら過ごそう。
そうしたら一年なんて、あっという間である。
釈迦堂的縄文人になろう。



川口園さんは電話での予約受付である。
日中はぶどう畑で作業をしておられ留守があるので
根気よくお電話が繋がるのを待つのがよいだろう。
むろん指定時間外の電話は避け、
HPの規約http://kawaguchien.jimdo.com/宿泊/ご利用案内/
よく読んでから、配慮と余裕をもっての問い合わせを心掛けていただきたい。

ワインのラベルのことをフランスではエチケットと呼ぶ。
このエチケットではないが、
エチケットは利用する側も心地よく守るようにしたいものだ。




(おわり)






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